「佐藤可士和の仕事術」トークイベント 

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「デザインノートNo.74」の特集『佐藤可士和の仕事術』の刊行にあたり、佐藤可士和氏によるトークイベントが青山ブックセンターであったので、佐藤さんにお会いしてきた。本誌で取り上げられている各企業やブランドを中心に、収まりきらなかったお話を中心にイベントは繰り広げられた。

佐藤可士和さんとは?

クリエイティブディレクター、アートディレクター。博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブンイレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。http://kashiwasato.com(デザインノートProfile参照)
クリエイティブディレクターという肩書きでは、全容が見えにくいということで、本誌では、佐藤さんのお仕事に密着して、仕事のプロセスや普段どんな決断を下し、何を行なっているのか、表面的な部分ではなく、仕事の細部がよりリアルに集約されている。また、佐藤さんの現在を知るキーワードとして、以下の7つのキーワードを元にまとめられている。今回のトークイベントでは、編集者である原田さんが予め用意した質問に対して、佐藤さんが答える形式のイベントであった。

佐藤可士和の現在を知るキーワード7

  1. 思考プロセス
  2. 伝統と革新
  3. 新しいブランド戦略
  4. プロフェッショナルの役割
  5. 人材の育成
  6. アートワークとデザインワーク
  7. 海外への発信


1.思考プロセス

常に変化を求め、新しい概念や体験を社会に向けて発信することを目指してきた佐藤。そんな彼のクリエイションは、長年の経験ん中でビルドアップされてきた揺るぎない佐藤個人の「思考」と、チーム編成やつくり方など案件に応じて柔軟に変化する制作の「プロセス」が組み合わされることによって生まれている。(デザインノートより)

原田さん:本誌では、なぜ「共創」がテーマなのでしょうか?

今回のデザインノートでは共に創るという「共創」がテーマとして取り上げられている。佐藤さんが考える共創では、従来のやり方ではなく、新しいやり方が必要になってくる。依頼を受けてただ仕事をするのではなく、クライアントと一緒に作っていくことが重要。これは、オープンイノベーションの時代である今、1人で何かを作っていくことは厳しく、各分野のプロフェッショナルが集結して作って行く方がより素晴らしいものが生まれるので、なおさら共創が大事なのである。佐藤さんの仕事のスタイルとして、クライアントが本来やりたいものを導き出すことを大事にしている。あくまでも、佐藤さんは主体ではないポジション。

ブランディングには、第一フェーズと第二フェーズがある。2013年12月にスタートした三井物産のブランドプロジェクトの場合、「人が財産」という三井物産が輝くブランド戦略とプロセスデザインということで、第一フェーズでは、対外発信施策を受け、第二フェーズでは、インターナルコミュニケーションに特化したADPを展開。また三井物産の担当の方から、「社員から答えを出したいから、佐藤さん答えを言わないでって言われましたね」。社員一人ひとりがメディアですというキャッチコピーもあり、人をメディア化した三井物産だからこそ、このようなセリフが出たんですかね。このプロジェクトの場合、社員さんから出てきたものを形にしたのがSAMURAI。「共創」ということがよく分かる事例でした。

 

 

2.伝統と革新

ARITA 400project八代目中村芝翫襲名披露など、近年の佐藤の仕事には、日本の伝統に深く関わるものが多い。彼が目指しているのは、伝統的な文化や技術は確信の連続によって現代まで生き続けてきたという前提に立ち、文化や技術の本質をデザインの力で現代的にアップデートすることだ。(デザインノートより)

原田さん:佐藤さんが最近関わる仕事って、有田焼や歌舞伎など伝統的なものが増えてきていますよね。そこで地域創生のポイントは何でしょうか?

佐藤さんは、奇跡の復活と評され地場産業のブランド戦略の成功事例として注目を集めている今治タオルプロジェクトが有名だ。私の出身でもある愛媛県。こんなにも今治のタオルが有名になったのはここ数年だ。なんとこのプロジェクトは、スタートから既に10年経過している。たまたま佐藤さんがこのプロジェクトを手がけた同時期に、しまなみ街道でサイクリングができるようになったり、ゆるキャラブームで今治のバリィさんが人気になったり、FC今治に元サッカー日本代表監督の岡田武史氏がオーナーとなったこと、様々な相乗効果で全国から今治が注目を浴び始めた。このような要因もあり、今治タオルプロジェクトは加速したとも話している。そして、今年からこのプロジェクトは、第二フェーズに移りつつある。これからは、今治タオルだけではなく、今治という地域全体をブランディングしようとしているらしい。最近では、今治タオルの公式ブランドサイトをリニューアルオープンさせたこと。

また、地域創生だけではないが、ポイントとして、クライアントをリスペクトするが重要とも話す。今治タオルプロジェクトでは、当初、仕事の依頼受けたのにも関わらず、組合の人の参加率が低くて、担当者から「佐藤さん。直接工場に行って、みんながこのプロジェクトに参加するように説得してほしい」と言われたとのこと。これには、佐藤さんも腑に落ちてない部分がありつつも、各工場を回って地域の人に声をかけたという。しかし今振り返ると、これは結構よかったらしく、品質の良さを改めて知る事にも繋がったそうだ。

地域創生に携わる上で、デザイナーだからできることとは、自分たちが作りたいものや伝えたいものではなく、その地域が何を伝えたいのか、クライアントが考えているものをいい形にして伝えるのがデザイナーの役割であるとのこと。佐藤さんの仕事はコミュニケーションだから、相手に対するリスペクトが大事。だから、クライアントがえらいとかそういうことではなく、一個人の人間として、リスペクト精神を忘れることなくクライアントと対等に関わる佐藤さんは、謙虚な方だと感じた。

 

3.新しいブランド戦略

長年にわたりブランディングを担当するクライアントが多いSAMURAI。時代とともに多様化する企業のニーズに対応すべく、近年は建築家を社内に迎い入れるなど、ブランドのコンセプトやネーミング、CI・VIはもちろん、プロダクトや空間、建築までトータルで世界観を構築していくブランド戦略の最新型を追求している。(デザインノートより)

原田さん:なぜ今インターナルブランディングなのか?

インターナルブランディングはここ5,6年で増えてきた。三井物産ヤンマーとか、外側に対して、こういうのやりますって言うけど、会社が出かければなるほど、伝わりにくくなる。社員が腑に落ちるかそうでないかが重要。万が一、腑に落ちなければ、進む求心力が弱くなる。インターナルブランディングは大企業ほど難しい。近年、会社とは何かと存在が問われる時代になってきている。転職が当たり前になったり、会社が買収されたり、会社という枠組みが昔と比較して変化してきた。エクスターナルとインターナル、お客様と社員の隔たりがなくなってきている。

インターナルブランディングでは、社内向けのムービーを作ったり、階段やエレベーターにポスターを作ったり、webサイトを作ったり、雑誌を作ったり、媒体は幅広い。完成したものよりも、その仕事に携わる上で、プロセスの中での気づきが多かった。日清食品のインターナルブランディングを手がけたとき、代表の安藤さんから、「会社としてもっと一体感がほしい」と言われて、社員それぞれが自身の担当する商品を形取った名刺を作成して、日清サイトにも掲載。これは、日清食品グループらしさを象徴するツールとして、商品型名刺が採用されていいて、社員は、商品型名刺をきっかけに、初対面の人とその名刺について5分間くらい話すこともあるらしい。でも結局は、社員が理解してやることが一番大事で、自社商品や特徴について自身が考え、名刺を渡す人に自分の言葉で語るというインターナルブランディング。そして、その名刺を受け取った人は、何を作っている会社なのか理解してもらうエクスターナルブランディングともなっている。

 

4.プロフェッショナルの役割

人工知能などの進化により、仕事のあり方が大きく変わろうとしている中、佐藤の関心は、プロフェッショナルの役割に向けられている。彼が考えるこれからのデザイナーの役割は、膨大な選択肢を前に適切な判断を下すディレクション能力、多様な視点や意見をまとめ、コンサルティング能力を発揮することだ。(デザインノートより)

原田さん:人工知能は仕事にどんな変化をもたらすか?

近年AIを使った仕事をしている。まあ、自分で作っているわけではないのだが。人工知能は仕事にどんな変化をもたらすかということだが、これは仕事の内容ではなく、仕事のやり方が変わる。裁判だと、判例を人間が覚えるのは限界があるので、それをAIがデータを元に最適な答えを教えてくれる。すぐに弁護士がいなくなるのではなくて、共存していく時間が多くなっていくのではないだろうか。

デザイナーもだいぶ変わるだろう。以前、アップルが素人が撮影した写真でiPhone6の広告というものを出たりしたこともある。何をもってデザイナーと言われるのか問われる。従来のやり方をやっていたは、淘汰されていく。

今後スキルの部分がAIやロボットに代替えされていくことで、デザイナーの役割は変わる。そんな中デザイナーに求められる役割とは、ディレクションやコンサルティングをする能力。感情的な部分は、今の所、ビッグデータでは反映されないから、どうしていきたいかが重要で、人工知能研究の専門家である松尾先生も「人間がどうしていきたいか考えるべき」とおっしゃていたとのこと。また、デザイナーは相手がどうしていきたいのかコンサルティングしていくときに、ただ作るのではなく、最適解を見つけていくことが大事になる。

 

5.人材の育成

40代前半までは人材の育成についてリアリティを持てなかったという佐藤だが、50代を迎えたいま、その意識は大きく変わってきた。社内スタッフはもちろん、講義を行なっている慶應義塾大学SFCの学生に対しても、自らの経験を伝えながら、人材の育成や発掘に取り組んでいくということに真摯に向き合っているという。(デザインノートより)

原田さん:優秀なスタッフを育てるコツは何ですか?

今年で17年目を迎えるSAMURAI。社員と言っても一概には言えなくて、デザイナーではないが佐藤さんやスタッフが最高のパフォーマンスで仕事ができる環境を創るクリエティブマネージャーの悦子さんや、仕事の経験がある中途の人や、1年間のインターシップを経て新卒でSAMURAIに入社する人など、幅広い。離職率はどうかというと、ここ直近の10年は、事業サイド(アプリ)をやりたいっと言った人を含め2人しか辞めていないので、比較的、長く勤めている人が多い。SAMURAIから独立した人はまだいない。

優秀なスタッフを育てるコツなのかわからないが以下のことに気をつけている。まず一つ目は、仕事以外のことは何もいわない、干渉しない。社員の飲み会には、佐藤さんと悦子さんは行かない。飲みにいって説教など、尚更しない。これは博報堂時代など自身の経験からきているもので、社員とは、プライベートな話は極力避けて仕事の話しかしない。二つ目は、なるべく仕事を振るときに、担当者を選んでいる。得意だからやらせたり、苦手だからやらせたり、なるべく多様な仕事を経験させて、そのバランスを大事にしている。また、その人の成長に合わせて一人でやれるかやれないか、役割を入念に見極めている。

40代前半までは人材の育成についてリアリティを持てなかったという佐藤さんだが、これは、博報堂の文化でもある上の人から教えてもらうのではなく、自分から盗みにいくスタイルが多少影響しているのかもしれない。

 

6.アートワークとデザインワーク

ARITA 400projectに参加したことを機に、アートワークの制作に力を注いでいる、先日手掛けたbeauty experienceの仕事にも見られたように、一点物のアートワークをブランドのアイコニックなオブジェでありSNS時代におけるパワフルな拡散ツールと捉え、アートとデザインの境界を意識させない新しい表現のあり方を模索している。(デザインノートより)

原田さん:SNS時代におけるアートワークの役割とは?

佐藤さんは、美大を卒業していてもともと絵を描く事がすき。だが、佐藤さんが学生時代のときにその作品を効果的に見せることはなかった。時代的なものもあるかもしれないが、個展を開催しても、当日来るのは、知り合いなどかなり限定的な人ばかり。また、日本のアートはマーケットが小さいということもあり、もっと多くの人に見てくれるメディア露出が多い広告代理店を大学時代に選んだ。

現在は、バーチャルなものに世の中がよっている。人工知能という言葉に対して少し苦手意識があって、どこかに喪失感を覚える人も多いのではないだろうか。そんなときにある職人が作った世の中に1つしかない器とかが目立つようになっていく。そもそもデザインとアートはマーケットが違うし、例えるなら、リーグが違う。デザイナーがアーティストになり活躍する人もいるが、デザインとしてパワフルなコミュニケーションツールとして使うようになっていく。1つしかないアート作品がバックストーリーも含めて、SNSに拡散されていきパワフルなコンテンツとなっていく。

 

7.海外への発信

ユニクロのグローバル戦略など、以前から海外での仕事を経験してきた佐藤だが、文化交流使の活動を通して、海外への目線はクリアになってきている。日本の企業やブランドはもちろん、伝統的な文化や匠の技術などを、言語を必要としないデザインの力を活用して世界に発信していくことに大きな手応えを感じているようだ。

原田さん:日本をブランディングできるのか?

全然できる。僕だけとかじゃなくて、ブランディングしないといけない。内閣府が実施した選択する未来委員会のメンバーを昔やっていた。政府の公式文章として、このとき初めてブランディングという言葉が使用された。ただ、もっと効率良くできる部分があるのになとは思うけど。海外に仕事で行っていることが多いかもしれないが、日本は海外からみなさんが思っているより評判がよくて、イギリスやフランスの大使館から、ここ10年ぐらいで日本の評判が固まったと言われた。それまでは、日本の文化って特殊なものと見られたらしい。日本人って感性の解像度が高い。些細なことでも気がつくから、おもてないができたり、精密なものがつくれたり、日本はここが売りとなる。

4000年前に中国から漢字が入ってきたり、最近だと欧米のカルチャーが入ってきたり、また話が少し変わるがパリで三ツ星の店を日本人がシェフとして経営してたり。日本人って、いろんなものをカスタマイズして独自のものにしていくのがうまい。つまり、感性の解像度が高い。日本でフランス人がやっている有名なお店ってあんまりないよね。佐藤さんの仕事はコミュニケーションだから、日本の文化をより世界に広めていきたいこともある。

また、日本人が日本の良さを完全に理解することは厳しいという問題があるかもしれないが、例えば、自分のことを自分で完璧に理解できていないことがあるのと同じで、日本をブランディングする上では外側の視点が大事。共創がまさにそれで、ブランディングするといって、自分たちでやれればいいのではなくて、外部の人を巻き込んでやることもある。外側の視点が大事。インターナルに対する意識とエクスターナル意識は同じ。

 

最後に

つい先日、佐藤可士和の超整理術という本を読んで、佐藤さんの人柄や思考性に惹かれてファンになったので、本物に会ってみたいという好奇心から今回のイベントに参加した。参加者の層としては、私のような若い人からご年配の方まで、幅広い年代の人が参加していた。年代や経験、ファン歴も違えば、同じトークイベントでも感じることは多々違うだろう。私は、今回のトークイベンに参加して、正直ブランディングとかそういった話はいまいちピンとくる部分は少なかったが、佐藤さんの圧倒的なクリアな視点をもつところ、本質を見逃さない部分、また、クライアントを見下すのではなくリスペクトして、共に創るという姿勢、仕事のあらゆる部分に対して配慮を欠かさないところなど改めて知ることができ、これは今後社会人になる上できっと役立つことになると思う。このイベントに参加でき本当によかった。佐藤さんありがとうございました。

また、イベントには佐藤さんお奥様もいらっしゃっていて、個人的にファンなので、思わずサインをもらってしまった。本当に美人な方で、かっこよかった。その後、イベントで知り合った優しい方から、「今日のトークイベントは、君の場合、仕事を経験していなかったら難しい部分もあっただろうね。今のフェーズなら、この本を読むといいよ」とアドバイスいただき、佐藤可士和のクリエイティブシンキングという本をいただいた。本当に有難い。今は、読むべき本がたくさん溜まっているので、先にその本を読みつつ、次の楽しみとして取っておきます。読むが楽しみです。ありがとうございました。

イベントって本当に面白い。新たな気づきはあるのはもちろんだが、そこから新たな出会い、新しい価値観に触れることができる。現状維持は衰退だと考えているので、常に新しい情報をキャッチしつつ仕事を楽しんでいきたい。

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